キテレツ大百科(2)

キテレツ大百科 2 (藤子・F・不二雄大全集)

キテレツ大百科 2 (藤子・F・不二雄大全集)

農協系児童誌「こどもの光」での3年に渡る月刊連載は2巻で完結。ちょうどドラえもんが最高に面白い時期だったこともあって、キテレツの面白さもハンパない。ただ、ドラえもんと同じような展開が多数含まれるのはちょっと残念なところ(キテレツの方が先のものも多数あるが)。なお、1・2巻のカラー口絵+表紙で、キテレツのカラー原稿は全部網羅されているとか。

  1. 念力帽ドラえもんの「エスパーぼうし」を思わせる道具だがストーリーはまるっきり異なる。誘拐されているのに危機感のないキテレツと、間抜けな誘拐犯の掛け合いが良い。キテレツの物怖じしない性格も幸いして解決。銅線を抜かれて「アガアガ」となるコロ助が機械っぽいw
  2. 如意光で引っこし:如意光。あえて似せたのかと思ってしまうほど、機能といい形状といいまるっきり「スモールライト」。小さくなることの恐ろしさとか不安感を煽って描く。コロ助の役立たずっぷりがもう・・。みよちゃんの「キテレツじゃなくてオゲレツだわ」という名台詞も。大喜利かいな。
  3. 人間植物リリー:SF短編「マイ・ロボット」('79)の原点のような話。ロボットではなく人造植物だが。やられながらなぜか「キャ〜ッ、大根足キック」と技名を叫ぶみよちゃんと、川に身を投げたら余計に元気になったリリーにワラタ。
  4. わすれん帽:「失恋はラブミ膏」に続く、勉三さんの恋物語パート2。忘れさせる道具はドラえもんにも数あれど、記憶をシリンダーに詰めるというのは珍しい。勉三と君子の2人の記憶はリセットさせてそのままなのだろうか。
  5. 物置でアフリカへ:かなり無謀な世界一周。上空で止まってれば世界一周できるはず!→できない!?という展開はF作品で結構見られる。ある程度上空までは空気も一緒に回ってるんだよね。飛行機に引っ掛けたり、物置ごと落っこちたり、危険きわまりないことを繰り返す。
  6. 宇宙怪魔人ドラえもん「超大作特撮映画「宇宙大魔神」」('79)の元になったと思われる話。うまいこと騙して悪役をやらせるその手腕に感心する。コロ助のグランドロボ姿がウラドラマンとかぶって笑える。
  7. 動物芝居を作るナリ:道具はドラえもんの「人間ラジコン」('75)と似ていて、ストーリーは「ドロン葉」('78)の原点のような。珍しくコロ助が全編に渡って主人公的に活躍し、キテレツは最初と最後だけの登場。
  8. 地獄へいらっしゃいドラえもん「しつけキャンディー」('79)のような始まり。疑似地獄をまるごと作ってしまうという、キテレツ史上最高の大仕事。つーかこんなもんできるわけないだろと。最後は完全にレジャーランド化。
  9. 海底の五億円:海水浴+宝さがし+沈没船と、盛りだくさんの夏の大冒険。ひたすら疑心暗鬼に陥るコロ助がなんだか可哀想。みよちゃんの水着姿もレア。何となくというか明らかに、みよちゃん→キテレツの気持ちの方がキテレツ→みよちゃんを上回ってるよなあ・・・。
  10. ネパール・オパール:透明人間になってみよちゃんを付け回す話。純粋な気持ちによるストーカー、とでも言おうか・・・。最後が入浴シーンというのもドラえもんゆずりの展開。最後どうやって切り抜けたかが気になる。
  11. ボール紙の街:いきなり太鼓をドコドコ叩くコロ助が狂ってておかしい。ストーリーは完全に「ゆめの町ノビタランド」だが、ミニチュア製造カメラで自動で建物を造ってたあれとは違い、木や池なんかもしっかり手作りするあたりがキテレツらしい。ジオラマ好きのF氏らしい話。
  12. スーパー天狗:ストーリーは「スーパーダン」そっくりだが、「枢破天狗」がパーマンセット並の性能を持っているところが凄い。というか無意識に活躍できるところはパーマンセット以上か。キテレツ斎恐るべし。
  13. おもい出カメラ:交錯する2つの謎。どちらも同じ道具で解決。物語の深さがどことなくTVアニメ向きの話であるように思う。ブタゴリラの頭の悪い推理が笑える。いやあんな想像図を描けるのは逆にすごいか・・
  14. 空き地の銀世界:冬らしい話。冒頭で「嬉しいナリ楽しいナリ」とはしゃいだり、「すべるスキーの風切る速さナリ」と歌うコロ助が可愛い。メインは空き地で遭難するキテレツとみよちゃん。何となくロマンスを感じさせる話なんだけど、オチはいつも通りあっさり。
  15. ままごとハウス:「即席スイートホーム」を思わせる、仮想結婚生活を味わう道具。みよちゃんだけじゃ話が持たないせいか、花野さんとか乙梨(おとなし)さんとか、今回限りの女キャラが続々登場。何だかんだでキテレツとみよちゃんはお似合いなんだろうか。
  16. 遊魂帽ドラえもんの「入れかえロープ」とはまだ別の趣向で魂の乗り移り・入れ替わり系パニック。みよちゃんの「チキショオ」とかキテレツの「ウ〜」とか、ワンポイントで笑えるネタもいろいろ。ワケわからなくなって狂ってしまうトンガリが気の毒である。
  17. 超鈍足ジェット機:パリへ行きたいとか北海道へ行きたいとかみよちゃんも結構ムチャを言う子だ。そして宿題に必死なせいかみよちゃんにやたら冷たいキテレツ。終盤に中学生のび太?風の少年が出てくる。のび太と違って彼女がいますけど。
  18. 仙境水:いわゆる「雲かためガス」。冒頭の「ペチャラクチャラ」といい、みよちゃんは明らかにしずちゃんとは違うキャラ設定だな。「ブロロオ」とか「ドバドバドバ」とか口で言ってるブタゴリラたちは低学年児のようで可愛いと思う・・・。
  19. 唐倶利武者:珍しく、特にヒネリのある道具ではなく、遠隔操作ができる強いサムライロボット。けがはしないけど痛みがすごいというのはどういう原理なんだ?
  20. さらば大百科:奇天烈大百科と別れを告げる最終回。F作品としては珍しくキッチリ終わった作品である。この回のパパの顔が違ったり、最後の方あきらかにページ足りない感じだったりするのはご愛嬌。ところで一体大百科はどこまでナイショでどこまで周りに公開してたんだろうか?全てオープンだったドラえもんと違い、そこの線引きがよく分からない。

ドラえもんと似たところもありつつきちんと差別化出来ているのは、キテレツがドラえもん的存在となっていること、異分子(コロ助)がのび太的存在であることが大きいのでしょう。あと、明らかにみよちゃんがキテレツに惚れてる(と思われる)ところとか。確かにキテレツは頭も良いし常識人だし情熱もあるし、魅力溢れる少年だよな。あとは何よりもコロ助の「ナリ」節が人気の一因なんでしょうね。