ドラえもん(3)

ドラえもん 3 (藤子・F・不二雄大全集)

ドラえもん 3 (藤子・F・不二雄大全集)

3巻は1963年度生まれ向けの72作品。この世代こそが初めて、小一4月号から小六3月号まで、6年間休みなく72作品のドラえもんを読める学年だった。作品の方向性の定まり切らない時期だったこともあり、小一の作品と小六の作品はまるで別作品のよう。序盤では幻のキャラクターも登場する。

  1. ねずみこわーい(小一 70年04月号):一応3月まで「幼稚園」で連載があったとはいえ、この世代以降は特に登場のエピソードもなく、おもむろに始まる。日常の中の非日常という作品の真髄がたっぷり味わえて、小学校入学時のドラ導入編としては最高の出来。なおこの作品は、初めてドラえもんが猫型ロボットであることが言及されたり、ネズミ嫌いが判明したり、スモールライト(らしき物)が初登場したり、記念碑的な意味合いも大きい。
  2. ドラえもん対ガチャ子(小一 70年05月号):半年に渡る幻の居候、ガチャ子シリーズの第1回。「ドラちゃんのかわりにきた」と突然現れたアヒル型ロボットのガチャ子が、ドラえもんと「お助け対決」を繰り広げる。わずか8Pながら話のテンポの良さは抜群で、この話の出来に作者も編集部も味をしめてガチャ子シリーズがしばらく続いたのかと思わせるほどだ。
  3. きょうりゅうが来た(小一 70年06月号):ガチャ子シリーズ第2回。前回はドラもガチャ子も困った奴だったが、この話でガチャ子一人が「迷惑ロボット」の座を不動のものにする。あの恐竜どうやって連れてきたんだ。ある意味凄いわ。2ヶ月前の「小さくするきかい」(スモールライト)が再登場。
  4. まほうのかがみ(小一 70年07月号):ガチャ子シリーズ第3回。シリーズ中最もガチャ子が活躍(?)した回であり、主役とまではいかないがガチャ子が完全な「ギャグ担当」になっている感がある。ドラえもんが車を運転するなどレアなシーンもあるのだが、ガチャ子のライダー姿や大増殖のインパクトが強すぎてそれしか印象に残らない。
  5. いぬになりたい(小一 70年08月号):ガチャ子頼みが過ぎると思ったのか、いったん彼女は退場。猫や犬に変身したのび太が起こす騒動の話だが、これは一体なんのための道具なのか・・・。ふらっと入ってきた猫を天井裏に放り投げてネズミを捕らせるしずちゃんがひどすぎる。
  6. ウルトラワン(小一 70年09月号):スネ夫のカラーテレビ自慢から始まる、時代を感じる話。テレビに取り付けると何でも出てくる扉が登場するが、特撮が生放送なわけもないし、タイムマシン的なことになっているのだろうか。この手の道具は深く考えたら負けだが、本当に自由すぎる。
  7. ゆめ(小一 70年10月号):人が見ている夢をのぞき見したり、夢から物を引っ張り出したりする、これまたフリーダムな話。夢から怪物を引っ張り出して、現実世界に登場させたりもする。どう考えても、夢の中だけにしといたほうがマシだろうが。スネ夫の夢が図々しいのは初期からか。
  8. おかしなでんぱ(小一 70年11月号):原題「クルパーでんぱ」。ガチャ子が4ヶ月ぶりに登場。街中の人をクルクルパーにするという危険すぎる道具を出して大混乱させるガチャ子。結局街メチャクチャになり、一切解決しないまま終幕。どんな話だよ。この話を最後に、何の説明もなくガチャ子は姿を消す。さらば。
  9. かべぬけき(小一 70年12月号):壁を抜ける機械でドラえもんがいたずらをしまくる話。これがガチャ子ならそんなに違和感はないんだけど、どうもドラのキャラが定まりきってないように見受けられる。
  10. かべ紙の中で新年会(小一 71年01月号):作品中頻繁に出てくる壁紙シリーズが初登場。喫茶店やトイレまである。見たこともない友だちも大量に登場する。「えへらえへら」って描き文字が初めて読んだ時からずっと印象に残っている。
  11. 虫めがね(小一 71年02月号):道具主体のストーリーがだんだん確立されてきた。道具百科企画ではよく見る「大きくなる虫めがね」の初出話。初期ならではのスラップスティックな展開に惚れる。定番の「まとめて追ってくる」コマがインパクト強し。ジャイアンのへそやしずちゃんの脚はどういう流れで大きくしたんだ(笑)。
  12. まほうのとけい(小一 71年03月号):ドタバタパニックの傑作。時計の針を動かすと実際の時間も変わる、簡易タイムマシンのような道具でさんざん世の中に迷惑をかけまくる。なんでニュースとウラトルマンが同じスタジオで収録されてるのかと(笑)。
  13. まほうの地図(小二 71年04月号):どこでもドアのはしりのような道具。いちいち地図に印をつけなきゃいかんのが面倒だが。中盤のスネ夫が錯乱していく展開が秀逸。「うちのうまいものがあるとドラえもんが来るんだ」って、オバQと間違えてるんちゃうか。オチは何でそんな地図があるのかとか、空気は?とか、突っ込みどころ満載。
  14. 空とぶさかな(小二 71年05月号):スネ夫の自慢からはじまるパターンのはしりだが、空中で魚を飼うという発想はすごすぎる。魚を散歩させたりチンチンさせたりとシュール極まりない絵が満載。最後は「海の真ん中で」餌をまいたおかげで悲惨なことになったが、ドラたちはちゃんと沿岸部で撒いてるんですね。さすがそのあたりの整合性は抜かりない。
  15. 役立つもの販売機(小二 71年06月号):なかなかの怪作。序盤でいきなり便箋を飛行機にするドラのび、金持ちなくせに10円をケチるスネ夫もなかなか良いが、やはり10円で出てくる先生と、芸人並のリアクションを見せるスネ夫ジャイアンがピカ一でしょう。というか、あの先生はコピー物? 最後の「どぶへ捨てるんだ」も笑える。普通に返せよと。
  16. ソノウソホント(小二 71年07月号):他の道具が全て要らなくなりそうな超万能道具が登場。いろいろとこじつけるわけでもなく、科学的に不可能なこともストレートに実現してしまうんだから凄い。珍しいジャイアンの父ちゃんも登場し、のび太のパパと相撲をとるがただの噛ませ犬でした。。
  17. せん水艦で海へ行こう(小二 71年08月号):夏なので海の話だが、潜水艦で海へ行くという新しい発想。潜水艦といっても水から水へとジャンプを繰り返すので、ビジュアル的にも楽しい。後半の連続ジャンプのテンポが素晴らしい。
  18. いんちき薬(小二 71年09月号):仮病のための薬なんて不要物の極致に思えるが、小学生にとっては結構欲しい薬だろうなあ。子供心をしっかり理解してるF氏。のび太も悪いが、けしかけてるドラも悪質だ・・・。というか最初から最後までママがかわいそう。フワフワののび太の代わりになぜか布団に飛び込むドラが意味不明でおかしい。
  19. ショージキデンパ(小二 71年10月号):息をするように平然と嘘をついてのび太を陥れる本山くん。1回きりの登場なのに、ここまで悪印象を残すキャラクターも珍しい。オモチャの双眼鏡をそこまでして取り返そうとするスネ夫も、取り返すよりものび太を追い詰めたいだけなんだろう。悪質な奴らだ。悪意が交錯しまくり、あまり後味のよくない話。
  20. ペロ!生きかえって(小二 71年11月号):名作。「そんなことができるなら、地球は生き物でうまってしまうよ」と、あらゆる「生き返り物」に対する説得力あるドラえもんの反論。これがあるからこそ、あえて反則気味の展開にしたこの物語が心に残るのだろう。秋空を飛び回りたいような、すてきな日ね! というさわやかな読後感(おまわりさんは一晩じゅう飛んでいたんだろうか・・・)。
  21. ほんもの図鑑(小二 71年12月号):基本、のび太の周りの連中は「借りた本を破るような」どうしようもない奴らであり、そこに「ドラえもん」の面白さの一端があるのだが、後年はそれが忘れられている気がする。それはともかく、この話はしずちゃん含む友だち連中の下衆っぷりが笑えるのだ。ほか、わずか一コマでやられるヒーローたち、図鑑の中ののび太の2行の説明文(笑)など、笑えるポイント満載。
  22. ランプのけむりおばけ(小二 72年01月号):この話は一転してのび太のクズっぷりが騒動を巻き起こす。まあ、あんな下僕が現れたら、いろいろ無茶な命令してみたくなる気持ちもわかるけど。というか、そもそもドラがこんな欠陥道具出すなと。最終コマで、正月からスーツ着て街を出歩く先生が謎(笑)。
  23. 雪でアッチッチ(小二 72年02月号):タイトルだけでほとんど話しの大綱が伝わってしまう。誰もが思いつきそうな温度逆転の発想だが、こたつが冷蔵庫みたいとか、雪でやけどするとか、その結果は想像以上に面白い。実際に凍るってことは、体感だけじゃなく、実際に温度が変わってるのだろうか?
  24. 入れかえロープ(小二 72年03月号):見た目も心も変えず、性質(?)だけ入れ替えるロープ。なぜか周囲の反応も入れ替わる。いちいち「ぼくのび太だけど」とか名乗ってコミュニケーションとってるのがおかしい。もとに戻す順番は、ややこしいこと考えずに、入れ替えたのと逆順でよかろう・・・。
  25. ヤカンレコーダー(小三 72年04月号):扉がてんコミと違う初出版。テープでの文通ってのも時代を感じる。未来のヤカン型テープレコーダーは、再生もどうやら1回限りらしく、実用性は低そう。ジャイアンへの悪口が「ノーテンゴリラ」「くそったれ」「しんじまえ」って・・・辛辣すぎ!
  26. テストにアンキパン(小三 72年05月号):この1話きりの登場なのにやけに有名な道具「アンキパン」。B6判くらいの巨大なパンにノートを写し、食べると暗記できるが、排泄したら終わり。凄いんだか馬鹿馬鹿しいんだか分からない。勉強はつらいなあって、それ勉強のつらさじゃないから!
  27. 潜地服(小三 72年06月号):ドンブラ粉と同じような機能の道具。話の展開は似てるけどちょっと違う。しかし、物を取り返すだけならもっと簡単な方法があるように思うが・・・。いきなりタタミを掘り出すジャイアンの行動力に笑ってしまう。
  28. つづきスプレー(小三 72年07月号):絵や立体物の続きを見られるという楽しい道具。有名絵画の続きがいちいち面白いが、これってちゃんと元に戻せるんだろうか。戻せないとしたら成金さんは悲惨だ。最後の聖徳太子には爆笑! その棒はそういう使い道のものだったんか!?
  29. タイムマシン(小三 72年08月号):作品を代表する道具がタイトルになっていることに若干驚くが、日本人なら誰もが望んだことのある、夏に冬に行ったり冬に夏に行ったりする話。まあ、のび太の気分屋っぷりが炸裂する1話ではあるが、最後に自分の行動を省みてるのはちょっと珍しいかも。
  30. 行かない旅行の記念写真(小三 72年09月号):わかりやすいタイトルだ(笑)。のび太が皆の前で見栄を張って後に引けなくなるパターンの先駆け。スネ夫がハワイを大げさに自慢してるのも初期ならでは。まず世界中の名所の写真がよく短時間で集まったな、という気もするが。
  31. かがみの中ののび太(小三 72年10月号):実際にフエルミラーなんてものがあったら、もう物は売れなくなっちゃうんだろうか。コピーガードとかがかけられるのか。しかも、鏡の世界の人間が自我をもってしまうというおまけ付き。欠陥品でしょ。ドラえもん、「ぼくこんな変な顔してたかな」って人のこと言える顔か・・・。
  32. 流れ星製造トンカチ(小三 72年11月号):わざわざ痛い目に遭わないと願いを叶えることができないというひどい道具。スネ夫のび太を殴って願いを言ったせいで、のび太の方で叶ってしまったということね。スネ夫の側も一応かなったけど(答えがあってるとことまでは望んでないし)。
  33. 重力ペンキ(小三 72年12月号):印象深い友達、あばら屋くん一家が登場。連載当時は、こういう貧乏一家がそれなりの割合でいたんだろうな。一見クリスマスパーティとは関係無さそうな道具をうまく使い、ハートフルな読後感に。
  34. フリダシニモドル(小三 73年01月号):ただ時間を戻す道具ではなく、戻る時間(1〜6分)がギャンブル的に決まるってとこが謎。とりあえず近い時間で適当に戻したいときしか使えないのか。のび太が新年の立派な決意をしたあと、4人で仲良くすごろくをするのが微笑ましい。というか残り一人なら、もう終わりなのでは?
  35. すてきなミイちゃん(小三 73年02月号):ときどき恋に溺れるドラえもんだが、この話ではオモチャの猫に恋してしまう。ロボットだから当たり前といえば当たり前なのだが・・・。のび太とドラの立場がいつもと逆転してるのが楽しい。ギャグテンポも最高で、絶望的なオチも含め初期珠玉の傑作。
  36. 地球製造法(小三 73年03月号):後年の「創世日記」やSF短編でもさんざん書く創世ものの先駆け。わずか17ページでこのストーリーの濃さ、恐れ入る。最後、実際に地球を作ったのに、言い訳もしないであちらを向くのび太がなんか大人だ・・・。
  37. うそつ機(小四 73年04月号):4月恒例、エイプリルフール話。「ソノウソホント」に酷似した道具だが、その機能はちょっと違い、どんな嘘でもみんなが本気にしてしまうというもの。やはりのび太の使いこなしっぷりが凄い。なぜか、スネ夫の嘘にもだまされずにだまし返してるし。
  38. スケジュールどけい(小四 73年05月号):ひたすら笑える大傑作。スケジュールどけいをドラえもんが使うことになってしまう展開にしたところが上手い。ありもしないおやつを食べたり、映らないテレビを見たり、半ばやけくそになっているドラが面白すぎる。わけもなくよその家で晩飯を食べるという、いたたまれないオチにも爆笑。
  39. ばっ金箱(小四 73年06月号):序盤からジャイアンが「自分はお金を出したくない」という自分勝手っぷりを発揮するのだが、最終的には自業自得でいちばん被害をこうむる。というかよそのお母さんに怒られてる時の「ガミガミガミガミ」っていう描き文字の勢いが凄い。相当ぶち切れてるな。
  40. バッジどろぼう(小四 73年07月号):ちょっとしたタイムパラドックス物。ドラえもんがなぜかピンホールカメラの手作り工作をしてたりとか、犯人扱いされ「ひどいひどい。うわああ」と泣き叫ぶところとか、要所要所で可愛い。のび太の「その盗んだ奴が犯人だ」は名台詞。何も間違っていないが・・・。
  41. 雪山遭難を助けろ(小四 73年08月号):初めてドラえもんが「どこでもドア」を出した話であり、またその道具の名前もここで初登場。超有名道具にしては意外と遅いのだ。雪山遭難者を助ける話だが、未来の世界の秘密はもらすわけにいかないという大原則も、連載初期はけっこう守られていた。
  42. ウルトラストップウォッチ(小四 73年09月号):後年のタンマウォッチと名前は違えど、同じ機能を持つ道具。のび太のいたずらがエスカレートする前にドラえもんが取り返すため、話としてはちょっと物足りない。しかし、早く歳を取るというのはホントなんだろうなあ。
  43. ダイリガム(小四 73年10月号):しかしまあスネ夫ジャイアンも罪を人になすりつけて嫌なやつだ。といってもこの道具が罪を人になすりつける道具なのだが。最後は結果オーライでした。「からだだけでかくて、頭はからっぽ」ってのも強烈だけど耳に残るフレーズ。
  44. しあわせカイロでにっこにこ(小四 73年11月号):にこにこしてれば幸せになれる、というドラえもんの話はもっともなのに、この道具が麻薬のような効果があるので、なんとなく話全体から怖さが漂ってくる。これが未収録の所以かもしれない。「うちどころが悪かったらしい」というスネ夫のコメントにもF氏の黒さを感じる。いや、面白いんだけどね。
  45. ボーナス1024倍(小四 73年12月号):一転して景気のいい話。この頃は金利が9%くらいで、定期預金が10年で倍になるという夢のような時代だったのね。しかし、これは一番簡単に道具で金儲けできる方法だが、法に触れないんだろうか・・・。これがアリなら何でもアリになるぞ。結局、「おかしいな、ふえてるよ」という反応が出る程度しか増えなかったわけですが。それでも十分だよな。
  46. タタミの田んぼ(小四 74年01月号):まず奇数個の餅を用意したママにも責任があると思うがそれはともかく、コメができるまでの流れも学習できる楽しい一話。最近の農業ブームで、卓上でコメが作れるキットが売ってたりするけど、近い将来にはこういった田んぼレベルのものも出るかもしれない。
  47. このかぜうつします(小四 74年02月号):こんな下衆い道具作るなって感じだが、あったらそれなりに使い道あるかも。やはり見所は、こういうときに限って紳士のような優しさを見せるジャイアンか。まあ、それでうつせなくなっちゃうのび太も良い奴だが・・・。最後は人を幸せにして、のび太と一緒にさわやかな読後感。
  48. かならず当たる手相セット(小四 74年03月号):やはり初出の「三十歳で気が狂って、四十歳で首を吊るというんだよう」のほうが台詞として優れてるので、遺憾である。後半はキイちゃんとかいう赤ん坊に殺されかける恐怖展開だが、あのまま殺されてたら親が逮捕されるんだろうか・・・。そもそも不幸の手相なんて何のために載せてるのか。他人にかいてあげれば殺人できちゃうだろ。
  49. お客の顔を組み立てよう(小五 74年04月号):顔のパーツを整形できてしまうという、なかなかに強烈な道具。モンタージュという言葉をこの話で覚えた読者も多いのでは。客の顔のパーツを的確に覚えてるのび太の記憶力は非凡だと思う。最後のあの悲劇は、一体何をどう押し間違えたらあんなことになってしまうのか・・・。
  50. いやな目メーター(小五 74年05月号):慰謝料を払ってくれる機械。その金が一体どこを財源として湧いてくるのかが気になるが。だがあの程度の金額じゃ、大怪我しても治療費すらまかなえなさそうだが・・・。壊れてるから怒ってるのに、壊れる前に怒れって・・・うーむパラドキシカル。
  51. 表情コントローラー(小五 74年06月号):強烈なインパクトを残すクラスメート、ムス子さんが登場。のび太のムス子への誘い方が酷すぎるが、ゴマスリメガネとか、ムス子の性格もなかなかに酷い・・・。勢いでしずちゃんまでパカっと笑わせてるが、しずちゃんは別に必要ないだろ!と読むたびに思う。
  52. ツチノコさがそう(小五 74年07月号):ツチノコといえばあの「ツチノコ見つけた!」の話が有名だが、実はそれ以前にこんな話もあったのだ。のび太は実はジャイアン以前に本物のツチノコを見つけていたのね。しかし、のび太の他力本願っぷりが、結果的にはその幸運も逃してしまう。もったいない。
  53. きせかえカメラ(小五 74年08月号):スネ夫でなくともファッションデザイナー垂涎の道具である。ジャイアンが純粋な夢を語っているのに必死で笑いをこらえるスネ夫、失礼なやつだ。最後のあの事故は結構やりそうなミスなんだけど、もともと着てた服はどこいった? 結果キャアキャア言わせられてよかったね!
  54. 虫の声を聞こう(小五 74年09月号):もうこの時代から都内のスズムシは消えてしまっていたのか? まあ、ドラとのび太も「つかまえてこよう!」と息巻いて空き地へ走ってるだけに、何も言えないわな。アットグングンは、普通に生長させるだけの道具ではないらしいが、あんな巨大な虫がいたら危険すぎるでしょ・・・。
  55. ネズミとばくだん(小五 74年10月号):ドラえもんがただひたすらネズミと闘う、超絶スラップスティック・ギャグ。放送禁止レベルの銃乱射に加え、あまりにも有名な「地球破壊爆弾」も登場。ちなみに初出誌では「原子爆弾」、修正後のほうが破壊力上がっとるがな。この話、のび太がママとタッグを組んで事を収めようとしてるのが珍しくて面白い。
  56. くせなおしガス(小五 74年11月号):前月に続く相当なドタバタストーリー。のび太の鼻くそほじり、ママの口なめ、パパの貧乏揺すりが全てパワーアップするというくだらなすぎる展開。のび太の巨大鼻くそは例の「鼻くそトーン」が貼られているが、F氏は結構鼻くそネタ好きだな。最後の巨大貧乏揺すりはパパ本人も気づかず逃げるとこが笑える。
  57. ロボットがほめれば…(小五 74年12月号):しずちゃんのおじさんも、平然と「幼稚園の頃かいたの?」とか口走っちゃうところを見ると、実際大した人物でもないのだろう。まあ、のび太の絵が相当酷かったのかもしれんが。「なるべくひどい絵をかいて」→「こりゃひどい」って流れが何か好き(笑)。
  58. ケロンパ(小五 75年01月号):なんとかからだを動かさずに運動できないかと考えるのび太、ほんとにどうしようもないガキだ。疲れだけうつしたところで、体はまったく鍛えられないと思うんだが・・・。スポーツ選手には喜ばれそうな道具だが、大会で使ったらドーピング扱いでしょうねえ。
  59. さいなんにかこまれた話(小五 75年02月号):これはなかなか便利な道具。どうせなら、災難の詳細も教えて欲しいんもんだが・・・。というかこの街は何でこんなに電柱から工具が頻繁に落ちてくるのか。危険すぎる。最後は災難報知器が災難を呼んでしまったという自作自演的オチ。
  60. カネバチはよく働く(小五 75年03月号):どこかに眠るお金を世に出すことは日本のためになるというのはごもっとも。しかしのび太は思いっきり自分で使おうとしとるがな。簡単に拾得物横領罪を犯してしまえそうな道具だけど、実際はある範囲で落としたお金を探すためのハチなんでしょうね。最後どうすんだこれ。
  61. くろうみそ(小六 75年04月号):パパの2ページにわたる、歴史上の偉人も多数登場するお説教は、のび太でなくともきちんと肝に銘じておきたいところ。F氏の教えですね。さすがののび太も感銘を受けて、結果、苦労を知る男になった。なんとなく小六3月号でもいけそうな話だ。
  62. ニクメナイン(小六 75年05月号):別に本人は悪くないのに、憎めない奴と虫の好かない奴、そんなのがいるよね、と世間のちょっとした理不尽さをドラえもんにさらっと語らせてしまうところが凄い。この漫画は、現実はハートフルな話ばかりじゃないことも教えてくれる。しかし最後ののび太の憎まれっぷりが凄い。全員が憎しみの表情向けてるもんな。
  63. 進化退化放射線(小六 75年06月号):この話の序盤だけなぜかのび太がパパのことを「おやじ」と呼んでるのがちょっと新鮮。キャラ違うぞ(注:後半では普通にパパと言っている)。「最新型」のラジカセが時代を感じるが、腕ラジオはスマホがあと一歩まで近づいてるか。パパは退化しても怖いが、進化版はトラウマものだ。
  64. 世の中うそだらけ(小六 75年07月号):1コマの無駄もないストーリー展開、登場人物たちのやけにウィットに富んだ台詞回しと豊かな表情、のび太の通常時と疑心暗鬼時の極端すぎるギャップ、のび太の巧妙な(?)詭弁、最後のジャイアンのあまりにも酷いオチ・・・とあらゆる笑える要素が10Pに詰め込まれた完璧な出来で、ドラえもん全作の中でも屈指の傑作ギャグ作品であると言わざるをえない。個人的には、ジャイアンのび太に言いくるめられて「その五十円は五十円アイスの五十円・・・」と何の意味もない確認をしてるところが可笑しい。
  65. のび太のび太(小六 75年08月号):タイトルからして惹き込まれるが、読めばすぐに意味が分かる。いわゆる「織り込み済みタイムパラドックスネタ」だが、緻密に張られた伏線と計算ずくめの展開は秀逸な出来で、これまた全作屈指のギャグ作品ではなかろうか。この時期のF氏は本当に凄い。夏休みののび太の、どことなく無益な1日がいっしょに味わえるところもポイント高い。さりげなく笑えるのが、宿題を「明日のぼくにやらせよう」と名案のようにひらめくのび太。絶対断られるだろ(笑)。
  66. トレーサーバッジ(小六 75年09月号):いつの間にかジャイアンズの選手兼任マネージャーを務めていたのび太。携帯電話も無い時代、みんなに連絡取るのも大変だ。トレーサーバッジはいわゆる発信機なので、当時でも実現は可能なはず。今はGPSがあるからもっと簡単だな。ジャイアンなんかいないっつってんのに、しずちゃんに「いやらしい!」と取り乱すのび太が情けない。しかしバカジャイアンのクソジャイアンってのも、どこまで憎んでるんだ(笑)。
  67. 王かんコレクション(小六 75年10月号):「流行性ネコシャクシビールス」が再び登場。コレクションってのはそういうもんなんだ、というのをちょっと極端な例で教えてくれる話。実際、王冠をコレクションしてる人は世の中にはそれなりにいるらしい。この漫画を見て集めだした子供もいたりして。
  68. ベロ相うらない大当たり!(小六 75年11月号):ベロ相よりも、作家志望の元高角三という男の話がメイン。結局はうらないなんか気にしないで、自分の信じた道をつき進もう、という話でした。実際F氏もそうして道を決めて成功したわけだしね。中学進学が近づく小六生に対するメッセージだ。
  69. 自動販売タイムマシン(小六 75年12月号):近代文化の研究者なんかにとってはヨダレが出るほど欲しい道具ではないか。それをのび太は、「ただ安く買える」ってだけで、しまいには金儲けのために使う始末。えんぴつ1本10円でもボロ儲けだな。百年後の世界では相当なインフレが進行しているようで・・・。つうか、どうして金入れてないのに出てきた?
  70. けん銃王コンテスト(小六 76年01月号):町中で究極のサバイバルゲームが繰り広げられる話。ジャイアンが「幼稚園のころからの夢だった」というほど、男にとってはたまらない遊びだ。何をやっても駄目なのび太が射撃でみんなのトップに立つ数少ない話。賢明なる小さな読者たちは、残り弾数を数えながら読んで「ん?」となったはず。オチのためにきちんとストーリーが(文字通り)計算されているんだな。
  71. ニセ宇宙人(小六 76年02月号):宇宙人に会ったという話を素直に信じちゃうのび太が可愛いというか馬鹿というか。トリック写真を撮るスネ夫ジャイアンが、宇宙人と出会いオロオロするのを見て胸をスカッとさせる話だが、最後の方はあまりに切実でちょっとかわいそうになってくる。ちなみに、後に大長編で本物の宇宙人と出会うことになるのだが・・・。
  72. シャラガム(小六 76年03月号):「ぼくももうすぐ中学生」の卒業話。半年に1度ののび太の決心が描かれる話。 こんなときに限って誘惑や障壁が多いのも世の常。結果、シャラガムという暗示の力があったとはいえ、道具の力を借りることなく自分だけの力でやり遂げたわけで、誰だってやればできるんだ、という作者からの読者へのエールが伝わってくる。

(2012.9.8 記)