ドラえもん(1)

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

▼1959年度生まれ編

  1. 未来の国からはるばると:あまりにも有名なドラえもん「小四」版第1話。この第1話の小さな出会いから27年に及ぶ大河連載が始まったのである。小四版ということは一番高年齢向けということであり、子孫とか未来のしくみも詳細に語られ、またのび太の悲惨な未来も余す所なく描かれている。のび太の未来アルバムも、最後の場面が25年後の1995年だからそれすら15年も過ぎてしまったのか。なお、最初の道具は「ヘリトンボ」(後のタケコプター)。
  2. ドラえもんの大予言:これまた有名な(?)第2話。車に轢かれる運命から逃げて逃げて、その果てには・・・。肝心な道具を肝心なときに忘れるというドラえもんの後年までの癖は既にここで見られる。当時のタイムテレビはプロジェクト式。後年のものより高機能だ。
  3. けんかマシン:変な出で立ちのヤンキー、飛んでいってぶっ壊れる自動車、入れ舌による罵詈雑言など、少々危ないネタを含むドタバタ劇。そのせいかてんコミには収録されず。当時の小四生はわずか3回でドラとお別れ。

▼1960年度生まれ編

  1. 机から飛び出したドラえもん:ほとんど知られていない「小三」版第1話。展開は小四版とほとんど同じ。だが未来ののび太をタイムテレビで実態映写して見せるというやり方で追い詰めていく展開が少々スパルタな感じ。オチはいまいち。
  2. 愛妻ジャイ子!?:小四では第1話でジャイ子との結婚が明かされていたが、小三では第2話で明かされた。ここで登場した子孫の「東京大阪間例え話」がてんコミ版第1話にも追加された。最後にのび太が若干の自立を見せる結構いい話なのにてんコミ未収録なのは解せない。
  3. のび太が強くなる:道具で自信をつけて調子にのる、というのび太のよくあるパターンが第3話にして早くも登場。ドラえもんの涙ぐましい努力。
  4. おいかけテレビ:未収録(注:「プラス」収録)なのが勿体無いくらいのドタバタギャグ傑作。後年にも頻繁に登場するテレビネタ。スネ夫母子が大活躍、というか悲惨な目に合う展開は序盤に多く見られる。
  5. (秘)スパイ大作戦:言うまでもないことですが、最初期ドラの敵はジャイアンではなくてスネ夫である。スネ夫に弱みを握られたので、逆に弱みを握り替えそう!というとんでもないお話。のぞき見はいけませんよ。
  6. 白ゆりのような女の子:名作。初のタイムトラベル系作品と思われる。パパの初恋物語。まだ当時は小学生くらいの子供の親は戦争体験がある時代だったので、戦時中へタイムスリップする話もいくつか見られる。一部、自選集向けの加筆あり。
  7. ロボット福の神:またどうしようもない道具である。そしてオチはスネ夫。このしょうもないオチは秀逸だと思う。
  8. のぞきオバケ:爆笑傑作。なぜ未収録だったのか不思議なほど。「写真もぼくらばかり映ってる」あたりが最高に笑える。最後の最後までのぞきオバケの正体の予測がつかないというか・・・わかるかこんなの。
  9. ああ、好き、好き、好き!:ぼた子という強烈なインパクトを与えるキャラが登場。藤子はブサイクキャラも秀逸だ。独身アパートぐらしの先生、カバみたいなおっさんなど見どころ沢山。ギャグのテンポも良くて笑える。オチは悲惨。
  10. ペコペコバッタ:結局、みんなそれなりの悪事を抱えているという話であった。優等生がカンニングしてるとかはともかく、警官が石川五右衛門怪人二十面相というのはどういうことだw
  11. わすれとんかち:これも傑作。ほんとに初期は立て続けに傑作が出るな。なんといっても正体不明のおじさんのキャラがなんとも言えない味を出している。またもスネ夫母子が活躍。おしぼりの上!オチはめちゃくちゃだが笑える。
  12. タイムふろしき:有名な道具の初出話。のび太が「カラーに買い換えましょう」と言っているが、白黒テレビがまだ普通の時代だった('70年のカラーテレビ普及率はわずか26.3%)。そしてオチはまたスネ夫母子。「新しすぎるざますっ!」
  13. のび左エ門の秘宝:文政9年にタイムスリップし、初めて先祖に会いに行く話。そして数多い宝探し話の一発目でもある。ドラのびの非常識な押しかけっぷり・・・。
  14. 好きでたまらニャイ:結構いくつかあるドラの恋愛話の先駆け。恋に悩むドラのイカレっぷりがやばい。のび太の恋愛コーチとか、ドラの自殺未遂(!)とか滅多に見られないシーン満載。そして恋が成就する珍しい展開。
  15. ドラえもん未来へ帰る:最終回。今回初収録。当時は「小五」への連載はなかったため、「小四」3月号が最終掲載話。前半の非常識な未来人たちが怒りを覚えるほどウザイが、後半の展開は悲しすぎて胸が痛くなる。ずっと笑って寂しさをこらえていたドラえもんが別れの間際に感情を爆発させて「のび太くんとわかれるのいやだあ!」と泣き叫ぶのは当時の読者にはショッキングだったに違いない。のび太の成長も「ましになった」程度で一抹の寂しさが残る最終回。

▼1961年度生まれ編

  1. 未来からきたドラえもん:これまたほとんど知られていない「小二」版第1話。ドラが過去へきたいきさつが少々簡略化されている。6種類ある第1話の中では唯一ドラえもんを両親に紹介する場面が描かれている。ばけねこ扱いされてますが。
  2. やきゅうそうどう:野球とお灸の区別もつかない無知なドラえもんだが、一応役には立っている。実力で入ったわけではないと悩んで練習するのび太が偉い。
  3. オーケーマイク:道具主体の話。やはりオチはスネ夫がもっていく。最後のコマで「三年生になったら『小学三年生』でかつやくするよ」と次号予告するあたりが何とも学年誌っぽい。というかそのコマのドラが異様にデカくて何か笑える。
  4. まんが家:「三年生にもなったら」という単行本に収録しにくい台詞から始まる。のび太の未来がいちいち面白い。そしてフニャコフニャオ初登場。初期にありがちなドラえもんが暴走してそれをボンヤリ見ているのび太、という展開。
  5. 恐竜ハンター:最初のタイムトラベル物。恐竜時代で激しいアクション。食われそうになったのび太の対処が頭良すぎる(実際はそんな短時間で光は集まらんだろうが)。
  6. ご先祖さまがんばれ:またもタイムトラベル物、今度は戦国時代。ほとんど最古のご先祖様が登場。ドラが対抗意識を燃やすのはやっぱりスネ夫
  7. 古道具競争:後半のたたみかけていく展開が秀逸。ママが狂っていくのに加え、パパの「まず、タバコを一服」〜「気持ち悪うい。助けて」あたりの一人芝居がやたら笑える。その次のページの超大ゴマも衝撃的。
  8. ソーナルじょうのび太が泳げないことがまだ有名でなかった時代の話。せっかく夢のような道具なのに、のび太のマイナス思考が炸裂してドラえもんまで巻き込む。
  9. うつつまくら:結局どこまでが夢でどこまでが現実で、うつつまくらという道具があったのかどうかも良く分からないという話。この道具に関しては、夢を現実と入れ替えるということは当人以外の意識はどうなるのか?などと疑問も尽きないので、おそらくまるごと夢オチなのだろう。
  10. のろいのカメラ:この頃は肉体より精神的に痛めつけてくるスネ夫が最大のライバル。のび太の気弱さも今以上だった。パーマンのキャラだったガン子がジャイ子の友達としてゲスト出演。憎たらしい性格は相変わらず。
  11. おばあちゃんのおもいで:おばあちゃんが、タイムトラベルに関して疑問も持たずに、それがのび太という確証もないのに「のびちゃんの言う事をうたがうもんですか」という大きな心で受け入れてくれる場面が全て。後年映画化もされた名作。
  12. エスパーぼうし:かなりハチャメチャな話。灰皿やら便器やらが跳び回ってキャラにぶつかりまくって、しかもその表情がいちいち秀逸。腹踊りに恥ずかしがるジャイアンがなんかレア。
  13. 手足七本 目が三つ:これまためちゃくちゃな話だ。終盤にジャイアンスネ夫しずちゃんが一気に襲ってくる場面が凄い。この漫画、終盤に皆まとめて追っかけてくる場面が多いよな。
  14. ドラえもんだらけタイムパラドックス・ギャグとして非常に完成度の高い傑作。「やろう、ぶっころしてやる」と発狂して自分自身を襲うドラえもんは多くの子どもたちにトラウマを与えた。
  15. のろのろ、じたばた:2話連続で宿題を頼むのび太、全く反省の色なし。「やきいもは、食べる前におならをする」「青森まで行ってきたよ」・・ドタバタギャグ最盛期。
  16. タイムマシンで犯人を:今度は比較的落ち着いたタイムパラドックスネタ。最後「男らしい!」とスネ夫は言ってるが、のび太はまるっきり男らしくない、というか誤りにきたスネ夫の方がよっぽど男らしいぞ。
  17. うそつきかがみ:のっけから美化120%ののび太とママに爆笑である。しずちゃんの変顔も未来永劫見られないもの。貴重です。
  18. あやうし!ライオン仮面ライオン仮面オシシ仮面、というキャラクターの魅力にゾッコン。オカメ仮面の姿も見たかった。そしてまたタイムパラドックスネタ。最後のコマのドラの疑問は永遠に解けることはない。
  19. かげがり:序盤の「おこった。」「あたりまえだ。」というテンポの良さに惚れる。それにしても物騒な道具だな。
  20. アリガターヤ:物語後半のありがたぶりのエスカレートがすごい。「べえ。」→「ありがたいおことば!」何も言ってないだろw
  21. ロボ子が愛してる:序盤、のび太が哀れすぎて泣ける。そしてしずちゃんよなぜそんなに冷たいのだ。イイロボットはレンタル代も高いってことはロボ子はやっぱり欠陥ロボットだったのか。
  22. ドラえもんの歌ジャイアンの初リサイタル記念話。しかし実際は狂ったドラえもんの歌声のほうが酷かったという話。ドラが狂ってからの展開はやたら怖い。オチでいい話っぽくするなw
  23. プロポーズ作戦:パパとママの結婚記念日。どちらがプロポーズしたかを調べに行く。結末はなかなかイイ。
  24. 夜の世界の王様だ!:原稿紛失により雑誌複写。のび太の一人相撲っぷりがおかしい。結局最後は当たり前のことに気づく。
  25. 勉強べやの大なだれ:実際作ったら売れそうな機械だな。しかしラストシーンはちょっと謎が多い。停電で立体映像が消えてママが見て「何やってんの」というオチなんだが、じゃあのび太はなぜまだわめいてるのか?目をつぶってたから周囲に気付いていないのか?でも停電になったらベルトも回らないはずでは?
  26. のび太のおよめさんドラえもんが来てから2年余り、この話でついにジャイ子との結婚という悲惨な運命を回避(この世代の第1話ではジャイ子との結婚は言及されていないが・・・)。タイムマシンで未来を見に行ってしずちゃんと結婚する運命に切り替わったことが判明し、物語は一応の決着を見せた。ラストシーンはしみじみとした味わいがある。
  27. ドラえもんがいなくなっちゃう?:最終回。前月で子孫関係の決着がついて、ドラとセワシにとってはのび太の自立だけが大きな課題として残っていた。のび太の自立を促すためにドラえもんは去り、のび太は一人で前に向かって歩き始める。ふたりが永遠の友情を築いた後年では決して見ることのできない、きわめて前向きで希望の持てる最終回。名作です。
  28. 再開予告:そして1年後、小六で連載再開!1年前の感動は何だったの?という気もするが、貴重な最終回を読めてしかもまたドラえもんに再会できた幸運な世代である。
  29. 石ころぼうし:再開1話目で「周りがうっとおしい」ってどういうことだ。しかしさすが6年生向け、多少エスプリの効いた話になっている。
  30. してない貯金を使う法:現代人の生き方=ローンの多用、これがいかに馬鹿らしいことかを教えてくれる作品。やはり6年生向けは違う。
  31. N・Sワッペン:と思ったら今度はただのギャグ話。しかしよく練られた話だと思う。
  32. ママのダイヤを盗み出せ:「ふたりのあやしい男が忍び込んで」というママの台詞から結末が予測できてしまいそうな話だが・・・やはりよく出来たタイムパラドックス話。
  33. 加羅峠の宝物:数多い宝探しの話の中でも、実際に現金をゲットできた話はこれ1回きりではなかろうか。しかも100万円?の札束。何に使ったのだろう。
  34. 怪談ランプ:道具で強引に世界を操作してしまう系の話は多いが、これは怪談を作り出してしまうのだからすごい。最初のママの話の「こわくて」は「硬くて」という意味です。
  35. 月給騒動:何か事件が起こって、それを解決するためにドラとのび太が過去に行って、結局事件の原因を作ってしまう・・・本末転倒な定番展開。
  36. 未来からの買いもの:だからドラえもんもそんなカタログを部屋に放置するなっての。しかも返品認められないってどういうことだ。
  37. 一生に一度は百点を・・・:滅多に出てこないジャイアンの父ちゃんがやたらいいことを言ってジャイアンをボコボコにする。すごい存在感だ。
  38. いやなお客の帰し方:ホタルの光のメロディーを流すってとこがいい。確かにそれが流れたら帰らなきゃって気分になるよな。子供の頃は閉店間際まで店にいることがないのでわからなかった。
  39. 出さない手紙の返事をもらう方法:しずかちゃんにいやらしい手紙を出すというのび太のエロ精神全開。何が書いてあったのか気になる。スネ夫の「じつにまったくほんとにもうこの世のものとも思えない大バカ」という文面もテンポが良くて好きだw
  40. ユメコーダー:「まず自分が理想の人物にならなきゃ」いう言葉で、卒業間近の小六生にさりげなくエールを送るドラえもんのび太は結局理解できていなかったけど。